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ソフトボール部名勝負!
H26 関東予選 大田原女子高校戦
吉田 峰人
平成26年度の関東大会栃木県予選は、矢板中央高校の初戦からいきなりシードの大田原女子高校との対戦。
平成25年秋に行われた新人戦の2回戦においてこの両チームは対戦し、ともに無得点の引きしまった試合展開の中、矢板中央は6回裏に1点をもぎ取られ0対1で敗れている。矢板中央サイドは「みんなが心を一つにして、なんとしてもシード校を倒すんだ」と新人戦のリベンジに燃えていた。
試合は5月10日土曜日午前9時、柳田緑地公園において、矢板中央の先攻で試合開始。
1回表、大田原女子の先発マウンドには落合が入る。アウトコース一杯に決めてくる速球に加え、チェンジアップを混ぜてくる投手だ。
その落合の立ち上がりを攻め立てる。
先頭打者田野が粘って落合の7球目をとらえ、左中間への二塁打で出塁。次の2番森は初球を3塁前への絶妙なバント。これを大田原女子のサード渡辺美がボールを取りそこない、1、3塁オールセーフ、無死1、3塁。次の3番佐藤に間髪を入れずに初球をセーフティーバントするが、3塁ランナー田野はホームへ帰れず1死2、3塁。4番柿沼の打席のところでスクイズを試みるが外角のボールに空振り、飛び出した3塁ランナー田野は三本間に挟まれ、あわてて3塁に帰ろうと試みるがキャッチャー木村からの送球の前に3塁ベースで惜しくもタッチアウト。2死2塁と変わる。柿沼はファーストゴロで3アウトとなり、無死1、3塁のチャンスを生かすことができなかった。
1回裏、矢板中央の先発マウンドには室井が入る。素晴らしい立ち上がりを見せ、1番人見をセカンドフライ、2番渡辺美をショートフライ、3番吉宮をセンターライナーに打ち取る。
2回表、矢板中央は先頭の5番長谷川はセカンドフライ、6番山口栞はアウトコースの球を空振り三振で2死ランナーなし。ここで3人で切りたいところだが次の7番山口翔のサードゴロへの打球を大田原女子のサード渡辺美がショートの方へ弾いてしまうミスで2死1塁。3人で切れなかった大田原女子の不安をよそに、8番中沢は左中間への当たり。一瞬センターフライかと思ったがキャッチャー方向への強風にあおられボールは懸命に走る大田原女子のセンター渡辺紗の手前にしぶとく落とす2塁打で2死2、3塁。ここで9番鏑木。2ストライクに追い込まれながらも7球しぶとく粘り、落合の投じた8球目をライトへはじき返す。鏑木の全力疾走が目に入り焦ったのか、大田原女子のライト都築はファーストへの送球が低くなる。鏑木のヘッドスライディングの前にファースト渋井はボールを取り損ね、ホームの方向にボールは転がる。サードコーチャーの小林監督はこの一瞬の相手守備のほころびを逃さず2塁ランナーの中沢を一気にホームへ。大田原女子のファースト渋井は転がったボールを取って懸命のバックホーム、しかし渋井からの送球がキャッチャー木村のミットに収まる前に中沢はスピードを落とさず本塁へのスライディングを終え、すでに生還していた。続く1番田野はショートフライに倒れたが、2アウトランナーなしからの大きな2点が矢板中央に入った。
2回裏、大田原女子も反撃。先頭の4番益子がショートへのフライ、しかし強風にあおられショート鏑木は戻ってくる打球の処理を誤り落球、無死1塁。続く5番落合のピッチャー前への送りバントで1死2塁。6番木村はショートフライで2死2塁。ここで矢板中央の小林監督は次の7番渋井の長打力を警戒し、タイムを取りマウンドへ。「渋井は歩かせていい」の指示で、ボールからの入りで様子を見る…はずだったが初球ストライクで混乱が起こる。渋井は室井の3球目をセンター前に弾き返すヒット。これには打った瞬間「ああ、1点入ったか」と思った観衆も多かったはず。しかしなぜか2塁ランナー益子はホームを狙わず、2死1、3塁。取られたはずの1点が入らなかったことで、矢板中央のマウンド上の室井は気が楽になったのか、次の8番渡辺紗を気迫の投球を見せて3球三振でピンチを切り抜けた。
3回表、矢板中央は先頭の2番森がセンターフライ、1死ランナーなし。3番佐藤は1塁へのゴロ、しかしファーストの渋井は佐藤の俊足に慌て、ボールを取り損ねるエラー。続く4番柿沼はライトへの素晴らしい当たりを放ったが打球が良すぎてライト頃、2死2塁と追加点のチャンス。しかし5番長谷川は三振に倒れ、追加得点にはならなかった。
3回裏、大田原女子は先頭の9番都築は空振り三振、1番人見は俊足を生かしてサードへの際どい内野安打、2番渡辺美はファーストゴロで2死2塁。3番吉宮をセカンドフライに打ち取り、チェンジ。
4回表、矢板中央は6番山口栞が三振、7番山口翔も三振、8番中沢もショートゴロで3者凡退。落合を立ち直らせてしまった。
4回裏、大田原女子は先頭の益子が1塁線への打球をライトの森がうまく入ってボールを捕りナイスプレー、ライトフライで1アウト。続く5番落合をショートゴロ、6番木村をショートフライに打ち取りこちらも3者凡退。森の好フィールディングが室井を救った。
5回表、矢板中央は先頭の9番鏑木は小技を使うがピッチャーへのゴロで1アウト。続く1番田野はショートライナー、2番森はショートゴロで3者凡退。
5回裏、大田原女子は先頭打者の7番渋井がカウント1-1からの室井の3球目をジャストミート。一瞬センターライナーかと思われたがボールはぐんと伸びて田野の頭上を越す3塁打で無死3塁。ここは大田原女子としては願ってもないチャンス。確実に1点と返しに来るはず。矢板中央サイドは当然前進守備シフトを敷く。大田原女子の鈴木監督はここを勝負どころとみて8番渡辺紗の打席に神田を代打に送り出す。しかし今日の室井は気迫がみなぎっていた。カウント2-2からの室井の投じた球に力負けし、ショートゴロ。しかも3塁ランナー渋井もホームへ突っ込む。ショート鏑木はこの打球を難なく捕球し、難なくバックホーム。ボールを受けたキャッチャーの山口翔は余裕を持って構え、周り込もうとする渋井の左手にタッチし本塁で刺した。1死1塁と状況が変わった。続く9番都築をセンターライナー、1番人見を3球三振に打ち取り大きなピンチを切り抜けた。
6回表、矢板中央はすっかり立ち直った大田原女子の落合の前に3番佐藤がライトフライ、4番柿沼は三振、5番長谷川はレフトフライに倒れ、3者凡退。
6回裏、大田原女子は先頭の2番渡辺美に初球をデッドボールで歩かせる。3番吉宮をレフトフライ、4番益子をショートフライに打ち取り2死1塁。5番落合は1塁線への当たり、とれる打球であったがライトの森はボールが低かったために上手く周り込んだがボールを弾いてしまい、2塁打として2死2、3塁。続く6番木村を歩かせ、2死満塁。ここで打席に入るのは最も怖い7番の渋井。要警戒の選手だ。初球、室井はボールから入る。2球目はストレートが外角に決まり、カウント1-1。3球目のストレート、投げた瞬間「やばい」と思ったが、渋井は手が出なかったのかそれともコースの読みが違ったのか、甘いと思われた球を見送り2ストライク1ボール。2球続けてのストライクに矢板中央サイド選手たち父兄たちの一体となった声援が一段とボリュームアップし波に乗り、大田原女子サイドを嫌な雰囲気にのみ込む。そして渋井も追い込まれたことで焦ったのか、4球目の外へ球2個分外したボール球に渋井は手を出して空振り三振。5回に続いての大ピンチを室井の気迫と周りの声援の後押しで切り抜け、笑顔で選手たちは意気揚々とベンチに帰ってきた(上の貼り付け写真参照)。
7回表、矢板中央は先頭の6番山口栞が三振、7番山口翔も三振、中沢はサードゴロに打ち取られ3者凡退…のはずが大田原女子のサード渡辺美の打球の処理が一瞬遅れ、ファーストへ送球するが間に合わず内野安打。次の9番鏑木は三振でチェンジとなるが、3人で打ち取れなかったことでなかなか試合の流れがつかめない。
7回裏、大田原女子の先頭の8番渡辺紗は三振、次の9番都築はサードゴロ。2アウト、でも最後まで気持ちは切れなかった。1番人見はカウント1-2からの4球目をセーフティーバントで転がすがピッチャー室井の前に転がり、室井は難なく1塁へ送球してファースト柿沼がこのウィニングボールをガッチリつかんで試合終了。2対0でシードの大田原女子から勝利を挙げた。
勝った瞬間、ウィニングボールをつかんだ柿沼は室井のところへ駆け寄り、キャッチャー山口翔、そして内野陣が室井を中心に歓喜の輪を作り、喜びを爆発させた。何度もピンチはあったが、最後の最後まで試合の流れを相手に一度も渡さなかったことが大きな勝因。試合時間1時間17分の引きしまった試合であった。
ちょうど1年前に一つ学年上のチームがさくら清修高校に1対2で敗れてまさかの悔しいシード落ちを経験してから丸一年、敗れたときと同じグラウンドで今度は後輩たちが大田原女子高校戦に次いで2回戦の小山城南高校戦も19対1で勝利し、準決勝に進出。シードの奪還に成功したのである。