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soft ball club updated 2022-09-30

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ソフトボール部名勝負!

H30 県北春季大会2回戦 大田原女子高校戦

吉田 峰人

 平成30年4月に行われた県北春季大会において矢板中央高校は初戦のさくら清修高校に14対1で勝利すると、2回戦は前年のインターハイ出場校である大田原女子高校との対戦となった。大田原女子は中学時代に日本一を経験している左腕投手丸山と外野手藤田のGEM2(U-16)日本代表経験者2名を擁する大変なチームで攻守のバランスが良く、どれをとっても個々の選手の能力は全国でも上位を狙える力を持っている。矢板中央サイドとしてはいかに守備のミスを少なくし接戦に持ち込むかというのが焦点となった。
 試合は4月29日日曜日午前10時30分、にしなすの運動公園において、矢板中央の先攻で試合開始。

 1回表、大田原女子の先発マウンドには左腕エースの丸山が上がる。その立ち上がりを攻める。1番の大野は2ボール1ストライクからの3球目を叩くと、ファーストのエラーを誘い出塁すると、2番高橋は初球をセンター前に弾き返し無死1、2塁。3番齋藤友のサード前へのバントで1死2、3塁として4番元尾のライトゴロで大野は先制のホームを踏む。なおも2死3塁と追加点のチャンスであったが荒巻の三遊間への当たりを大田原女子のショート鈴木がバックハンドで裁いてファーストへ懸命の送球でアウト。惜しくも追加点はならなかった。
 1回裏、矢板中央の先発マウンドには福田が上がる。1番大金を歩かせると2番郡司はファーストへの送りバント。3番渋井をセカンドゴロに打ち取り2死3塁とするが、4番平沢に豪快にレフトへ2点本塁打を打たれ1対2と逆転。5番丸山を四球で歩かせるものの6番熊田をレフトフライに打ち取りチェンジ。

 2回表、大田原女子の丸山は矢板中央の先頭の6番角、7番福田を連続三振にとるが8番和気はサードのエラーで出塁。9番鈴木への初球で瓦井監督はうまく仕掛け、1塁ランナー和気のディレードスチールが成功し2死2塁。鈴木はファーストゴロに倒れたものの、2死無走者からでも一人が出塁すればすかさず足で相手を揺さぶりチャンスを見出す粘りを見せた。
 2回裏、大田原女子の攻撃。先頭の7番渡邉をショートゴロ、8番鈴木をセンターフライ、9番平山をセンターフライに打ち取り三者凡退。

 3回表、矢板中央は先頭の1番大野が四球で出塁するが2番髙橋が三振、3番齋藤友がピッチャーゴロ、4番元尾が三振に倒れこの回無得点。
 3回裏、大田原女子の攻撃。1番大金が四球で出塁すると、2番郡司がショートゴロの間に大金は二進、3番渋井のサードゴロの間に三進し2死3塁とし、4番平沢の強烈な打球がサード強襲のレフト前タイムリーヒットとなり1対3。5番丸山がサードへの内野安打で2死1、2塁とされ、6番熊田の当たりは右中間にライナーが飛んだが、矢板中央のセンター齋藤友が判断良く打球に反応し好捕してチェンジ。しかし矢板中央サイドにとっては痛い追加点となってしまった。

 4回表、矢板中央の攻撃は先頭の5番荒巻が四球、6番角が送り1死2塁とするが7番福田がセカンドフライ、8番和気はレフトフライに倒れ、この回もチャンスがありながら無得点。
 4回裏、大田原女子の攻撃。矢板中央のピッチャー福田は7番渡邉を三振、8番鈴木をサードゴロ、9番平山をサードゴロに打ち取り三者凡退。

 5回表、矢板中央の攻撃。先頭の9番鈴木が三振の後、ここから力投の先発福田を援護しようと矢板中央打線が奮起。1番大野が1、2塁間のゴロを大田原女子のファーストが弾いてしまいエラーで出塁すると、2番髙橋の打席の3球目に「ここが勝負」とみた瓦井監督がまたも足を使った機動力で相手守備陣に対し揺さぶりをかける。大野がタイミング良く盗塁を決め1死2塁とし、髙橋は続く4球目を三遊間に叩き付けると、処理に焦っていた大田原女子のサードがまたも弾いてしまい1死1、3塁。3番齋藤友の打席時の初球に1塁走者の髙橋は2塁へ盗塁し1死2、3塁。齋藤友は丸山の投じた2球目を逃さず、上手くレフト前に弾き返すタイムリーヒットで3塁ランナーの大野が還り、2対3の1点差としてなおも1死1、3塁。続く4番元尾の打席時の初球に1塁ランナーの齋藤友が2塁盗塁で1死2、3塁。元尾は続く2球目を思い切りよく叩くと、これがセカンドの頭上を越して右中間へ。3塁走者の髙橋に続き2塁走者の齋藤友が一気に生還する殊勲のタイムリー二塁打でついに矢板中央は4対3と試合をひっくり返した。1死2塁から荒巻がセンター前で1死1、3塁。6番角の初球に荒巻は2塁盗塁で1死2、3塁。角は2球目を弾き返し、左中間へ落ちようかという当たりだったが大田原女子のセンターが上手く回りこんで好捕。さらに飛び出した2塁ランナー荒巻は帰れずダブルプレーでチェンジ。矢板中央サイドとしてはもう一押しといきたかったが追加点はならず。逆転は許しても追加点は絶対に与えないという大田原女子サイドの執念も見事だったが、チャンスと見れば一気に畳み掛ける矢板中央の攻撃も光った。
 5回裏、大田原女子の攻撃。この回から瓦井監督は福田に替えて荒巻をリリーフさせる。荒巻は先頭の1番大金をサードゴロ、2番郡司をレフト前ヒットで出塁させたものの3番渋井をセンターフライ、2安打と当たっている4番平沢の当たりはライトへの痛烈なライナーとなったがライト福田が上手く回りこんで捕球しチェンジ、逆転直後の大事なこのイニングを無得点に抑えた。

 6回表、矢板中央の攻撃は前のイニングで好プレーを見せた先頭の7番福田がレフト前で出塁、8番和気がショートへのゴロを相手のエラーを誘い無死1、2塁。9番鈴木の2球目に瓦井監督が意表を着く重盗で無死2、3塁。しかしここは丸山の意地の投球が光り9番鈴木が三振、1番大野の4球目に瓦井監督はエンドランを試みるが大野は空振り三振、さらに飛び出した三塁ランナーの福田も三本間に挟まれて一か八かのホームに突っ込んだもののホームに待ち構えた丸山がホームベース付近でボールを受け、余裕を持って福田にタッチしダブルプレー。矢板中央にとっては追加点の絶好のチャンスを逃してしまった。
 6回裏、大田原女子の攻撃は5番丸山レフト前ヒットで出塁、6番熊田のサード前へのバントで1死2塁。7番渡邉の三遊間のショートゴロで2死3塁。8番鈴木のセンター前で同点。9番鈴木を四球、1番大金のショートへの内野安打で2死満塁とされるがこちらも荒巻が踏ん張って2番郡司をセカンドゴロに打ち取り逆転は阻止。しかし、4対4の同点とされてしまった。

 しかし、この嫌な流れでも矢板中央サイドは動じない。

 7回表、矢板中央の攻撃。先頭の2番髙橋がピッチャーゴロ、3番齋藤友がライトゴロに倒れ早くも二死。4番元尾の引っ張った三遊間への打球は相手の守備範囲に飛びこれで三者凡退…となるはずがショートがボールを弾くまさかのエラー、相手からみればいないはずの手痛いランナーを1塁に出してしまった。ここはリズム良く三人で抑えて早く裏の攻撃に移りたかった大田原女子サイドにとってはこのちょっとしたミスに動揺が走ったことであろう。ここを瓦井監督は逃さなかった。5番荒巻に強打の指示を出すと、荒巻は期待に応えセンター前ヒットで続き、6番角も追い込まれながらも粘って四球を選び2死満塁。7番福田が2ボール1ストライクからの丸山の投じた4球目を見事にライト前に弾き返す執念のタイムリーヒットで3塁走者が還り、再び勝ち越し。さらに2死満塁から和気への初球を大田原のキャッチャーがボールを右ネクストバッター方向にこぼし、ボールを一瞬見失った瞬間を逃さず三塁走者の荒巻は猛然とホームへ。あわててボールを拾った大田原女子のキャッチャーが体ごと滑り込んでタッチにいき際どいクロスプレーとなったが、荒巻の足が一瞬早くホームに触れ球審はセーフの判定。貴重な6点目が入った。いや、入ったというよりは執念でむしり取ったという表現のほうが正しいかもしれない。和気は三振に倒れるが、2死無走者からの粘りの攻撃で矢板中央は6対4と三度勝ち越した。
荒巻の好走塁により2点差となりこれで試合が決まったかに見えたが、大田原女子サイドもその裏に驚異的な粘りを見せる。
 7回裏の大田原女子の攻撃は先頭の3番渋井がキャッチャー前への内野安打で出塁し、4番平沢はセンターフライに倒れるが5番丸山は左中間への二塁打で1死2、3塁。6番熊田はセンターフライで2死となるが7番渡邉に替わっての代打和地が3ボール1ストライクからライトへのライナーの大飛球が襲う。ライト福田が懸命にジャンプするも届かずライトオーバーのタイムリー三塁打となり土壇場で6対6の同点に追いつかれてしまった。なおも2死3塁のサヨナラのピンチだったがマウンド上の荒巻がここは踏ん張り、続く8番鈴木をセカンドゴロに打ち取りチェンジ。

 両雄がっぷり四つに組み合った試合は6対6のまま延長8回から無死2塁でスタートするタイブレーカーに突入した。

 8回表、矢板中央の攻撃は2塁走者和気、9番鈴木が先頭打者となった。鈴木はファーストゴロで1死3塁とするが、1番大野が三振、2番髙橋がサードゴロとなり、勝ち越したかったこの回まさかの無得点。
 8回裏、大田原女子の攻撃は2塁走者鈴木、9番平山が先頭打者となった。平山はサードへの送りバントで1死3塁とし、1番大金は故意四球で1死1、3塁。2番郡司の初球で1塁走者の大金は2塁盗塁、1死2、3塁。カウント1ボール2ストライクからの4球目に大田原女子サイドはエンドランを敢行。しかし郡司は空振り三振、飛び出した3塁走者の鈴木を矢板中央のキャッチャー元尾は追い込み、3塁ベースカバーの髙橋に送球して鈴木をタッチアウト、ダブルプレーでサヨナラのピンチを脱した。

 9回表、矢板中央の攻撃は2塁ランナーに髙橋、3番齋藤友が先頭打者となった。齋藤友は0ボール2ストライクと追い込まれながらも4球目を上手く転がしてファーストゴロ、2塁ランナーを進めて1死3塁とし、4番元尾も1ボール2ストライクと追い込まれながらも4球目を1、2塁間に叩き付け、これがファーストのエラーを誘い7対6と勝ち越し、なおも1死1塁。5番荒巻はライトゴロで2死2塁、6番角はショートライナーに倒れ1点止まり。しかし、7対6とした。
 9回裏、大田原女子は2塁ランナーに郡司、3番渋井が先頭打者になった。渋井はサードへの送りバントで1死3塁。ここで瓦井監督は満塁策を選択し4番平沢、5番丸山を連続故意四球で歩かせ、1死満塁。6番熊田はカウント2-2からの6球目を強く叩き、ショートへ。難しいバックホームであったが矢板中央のショート髙橋はこの高いバウンドのゴロを捕球しすぐさまホームへ矢のような送球。キャッチャー元尾は体を懸命に前に伸ばしてこの送球を捕球し、ヘッドスライディングする3塁走者郡司をホームで際どくフォースアウトにし2死満塁(上の貼り付け写真参照)。7番再出場の渡邉に対しカウント3ボール1ストライクとなったが、ここから荒巻は5球目をストライクでフルカウント、6球目を渾身のストレートで詰まらせセンター正面へのフライを齋藤友がしっかりボールを掴み試合終了。時計は13時8分を指し、2時間38分の延長9回にも及んだ死闘を制した矢板中央は決勝戦に進出した。
 相手投手に対し2ストライクと追い込まれてもしぶとく内野手の間に叩き付け守備のミスを誘う打撃を徹底、塁に出ればここぞという場面で選手監督間の意思疎通を図り、隙を見て足で揺さぶる機動力で相手投手を攻略してみせた瓦井監督の戦いぶりには全く持って驚くほかない。

 5回の逆転劇、7回の2死無走者からの集中打と隙を突いた走塁、バッテリーを中心に何度も訪れたピンチを凌いだ粘りの守備、選手全員が心を一つに気持ちを盛り上げチームワークで接戦を勝ちきり、矢板中央サイドにとっては今後の関東予選、インターハイ予選に向け大きな自信と確かな手応えを掴んだのである。